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執筆者の写真GUEST HOUSE IOLY 庵 OSAKA

ふたつの待ちぼうけ

ほとんどの方は予約サイトや ゲストハウス庵(いおり)大阪 のWebサイトを通して事前に宿泊予約をされますが、中には、電話でお問い合わせをいただくこともあります。お問い合わせ内容も、Webサイトで見た内容の確認や「夜10時を過ぎてのチェックインはできますか?」などと言ったご質問、「いついつ空いていますか?」といったものから、「今から行っていいですか?」という唐突なものまでいろいろあります。また、スマートフォンをお持ちではあるけどルート検索機能をお使いでない方もおられ、「今、駅の前です。」「今、スーパーの近くです。」と、数分ごとに電話をされた方もおられました。😅


そんな中で最も焦るのは、「今から行っていいですか?」というケースです。


事前に予約しておらず、「今から」という方の中には、急用でこのエリアに来ているとか、旅程が予定と変わったとか、何かしら事情がある方もおられます。ですので、こういったお問い合わせにもできる限り対応しているのですが、また、「何時頃到着します」「あと〇〇ぐらいで着きます」という到着予定時間が変動する方もたまにおられます。困ったケースでは、結局キャンセルされる方や、ノーショー、つまり、ご連絡もなくお越しにならないケースもまれにあったりします。


宿泊されているゲストさんも宿泊予約もなかったある夜、複数あった英会話レッスンをすべて終えて、リラックスしていたときに電話が鳴りました。

出てみると、若そうな男性の声で「今から」の宿泊のお問い合わせです。二名様とのことでした。「9時半までには着きます」とその男性。その時、夜9時前でした。

ラウンジとお部屋をセッティングしてお二人を迎え入れる準備を整えたところ、9時半の少し前にまた電話があり、「さっき9時半に着くって言ったんですけど、カノジョを待ってて、カノジョから連絡が来ないので遅くなりそうです。」と彼。電話口の彼の声の向こうでは踏切のカンカンカンカンという音が聞こえました。 なるほど、最初の電話では「二人」とだけ聞いていましたが、二人というのは彼とそのカノジョのようです。そして、当初の到着予定時間直前に「遅くなる」との電話が踏切のそばからかかってくるとは、彼は当館最寄り駅の恵我ノ荘駅まで来ているのでしょうか…?

そして、カノジョから連絡が来ないとは…??


そして、アイロンがけでもしながらお二人の到着または彼からの連絡を待ちました。


こうやって、到着予定時間が変更したり到着予定時間に遅れたり、そもそも到着時間が分からないゲストさんが来るのを待ったことがそれまでも何回かありました…。

その結果キャンセルになったりノーショーだったりということもあったのは前述の通りです。しかし、この夜の彼はこうして電話で状況を伝えてくれています。その後連絡が途絶えるようなことはないと思いたい。


それから、もうアイロンがけも全て終わり、時は夜10時半になろうとしていました。


彼らの到着も連絡もないので、10時半になった時点でこちらから電話してみました。

すると、「まだ連絡が来ないので、何時になるか分かりません。終電まで待って来なかったらキャンセルでお願いします。」と彼。終電が恵我ノ荘駅に着くのは午前12時20分

頃です。あと二時間弱あります…。「では、その時はご連絡ください。」とお伝えしました。


それから待つこと一時間と少し。


日付が変わるのを待たずして11時50分前ぐらいに彼から再度電話がありました。

電話に出てみると、彼がひと言「すみません、キャンセルでお願いします。」とのことでした。


何があったのかは分かりませんが、切ない事情であることは察しがつきます。

普段、宿泊予約ゲストさんの到着を待って、ゲストさんが結局来ないときは虚しささえ覚えますが、この夜ばかりはそうではありませんでした。

私がずっと待っていた間、この彼はもっと切実な気持ちで待っていたことでしょう。

彼ひとりでも来てくれたら、話し相手・飲み相手になったのに、と思いながらゲストハウス庵の表の電灯を消したのでした。

写真はイメージです。


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